前回のドローン活用事例【日本地雷処理を支援する会 ❶】の記事では、事前に地雷をドローンで探査する試験を日本で行った内容をご紹介しました。
カンボジアでの効率的な地雷・不発弾処理の作業を進めるための、地形データの作成や管理方法などの試験をしました。
今回は、実際に🇰🇭カンボジアへ行き、実際に試験した内容を紹介しています。
カンボジアについて
正式名称:カンボジア王国(立憲君主制の民主主義国家) 首都:プノンペン 人口:約1150万人 言語:クメール語(観光地では英語も可能) 硬貨:リエル(一般的にドルも流通しており使用可能) 気候:熱帯季節風気候で乾期と雨期に分かれる。11月~4月は乾期で5月~10月は雨期 |
(参照:カンボジア コトバンク)
9~15世紀にかけてのカンボジア王国はアンコール時代になり、アンコール・ワットやアンコール・トムなどの世界遺産が建設されています。
しかし、次第に勢力が衰えた1887年にフランスの植民地化となりますが、1953年にカンボジア王国としてフランスから独立します。
しばらく王政国家が続くも、1970年にクーデターが勃発し、以後内戦状態がとなります。
1975年にポル・ポト政権が誕生すると内戦は終結を迎えますが、ポル・ポト政権は「革命の恩恵は農村の労働者に与えられるべき」という考えから、市居住者、資本家、技術者、知識人などから一切の財産・身分を剥奪し、郊外の農村に強制移住させています。
学校や収容所は死刑場に変わり、100万人以上も死亡する悲惨な恐怖政治となりました。
1979年にはベトナムの支援を受け、ヘン・サムリン政権が誕生しましたが、混乱は続いています。
1993年にパリ協定に基づき、UNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)が総選挙を実施しシハヌーク国王が即位しました。
カンボジアの人口の約半分は20歳以下の子どもや若者になります。
人口の約80%が農業を営む経済的に厳しいものです。
また、性的虐待・地雷・エイズなどの危険な状態にさらされており、ポル・ポト時代に、たくさんの教員や高等教育を受けた人々が殺され、ほとんどの教育施設が閉鎖されたため、カンボジアの教育制度は崩壊しています。
国の復興にとって教育は最も重要な課題のひとつとなっています。
地雷処理の除去手順
(以下写真提供:JMAS)
認定特定日営利活動法人 日本地雷処理を支援する会(JMAS)
① 地雷原から、地雷が埋まっている場所を予測し場所を特定します
② 地雷が覆われている雑草を刈り、金属探知機で地雷の反応を探ります
地雷は、地中に埋られたり草むらの中に隠れているため、表面から発見できないため地雷がある場所を予測し金属探知機をかざして発見します。
草や林などの中から地雷の除去を行う場合は、安全な周辺から少しずつ草を刈りながら金属探知機を使用します。
③ 慎重に地雷を掘ります
金属探知機で反応があった地雷があると予想した場所を、少しずつ、ハケやシャベルを使って慎重に掘り土を取り除いていきます。
金属探知機は、小さなネジや鉄くず(砲弾の破片)にも反応することが多いため、地雷がないこともあります。
しかし、地雷は小さな衝撃でも爆発を誘導するので非常に危険な作業と、広い土地での炎天下の作業と集中力を要する作業はとても危険であり大変です。
④ 地雷を発見した時の処理方法
地雷が発見されたら、種類や大きさによって処理方法が違います。
- その場で爆破
- 起爆装置(信管)を外し回収後、まとめて爆破処理
たくさんの種類がある地雷処理には、起爆装置の位置や大きさにより詳しい知識や技術が必要となります。
⑤ 爆破処理
実際に行ったカンボジアでのスケジュール(8/14~8/23)
(写真提供:JMAS)
日本でのドローンによる試験状況
- 3D地形データ作成による進捗管理や作業エリアの事前確認及び、地雷の爆破処理の確認作業には有効
- ドローン撮影による可視画像や赤外線画像上での不発弾や地雷発見できるかの試験
日本では、地雷原などの広範囲でドローン画像によって地雷を発見できるかの試験を行い、カンボジアでは、ドローン画像から取得した地形データを活用し、作業効率化を向上させるための試験を行いました。
カンボジアで実際行ったこと
カンボジアでのケジュール
試験内容 | 場所 | |
1日目 | 移動・準備 | プノンペン コンポンチュナン |
2日目 | 3D地図作成準備 広域探査試験 | コンポンチュナン |
3日目 | 詳細探査試験 安全確認試験 GPS精度確認試験 | コンポンチュナン |
4日目 | 予備日 データ解析 | コンポンチュナン |
5日目 | ドローン紹介 試験結果報告 | コンポンチュナン |
6日目 | 移動日 | シェムリアップ |
7日目 | 移動日 | バッタンバン |
8日目 | 遠隔操作確認試験1 | バッタンバン |
9日目 | 遠隔操作確認試験2 | バッタンバン |
10日目 | 移動 | プンノンペン |
カンボジアで実際に行った試験
作業手順
- 試験エリアの四隅に目印(日本でいう対空標識)を置き、ハンディータイプGPS機器で座標値を計測する。*試験点として、別途2点ほど 目印を設置して座標値を計測しておく。
- ドローンで解析用の写真撮影を行う。
- 解析ソフトを使用して、3次元点群データとオルソ画像の作成を行う。
- 作成した3次元点群データ上での検証点の座標値と、実測値を比較して精度試験を行う。
- 作成した オルソ画像データ上での検証点の座標値と、実測値を比較して精度試験を行う。
その他の試験証内容
(写真提供:JMAS) |
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コマツの世界的な社会貢献
コマツでは、2008年から「日本地雷処理を支援する会(JMAS)」への支援を通じて、地雷・不発弾を処理した後も、住民が安心して暮らせるコミュ二ティ開発支援を行っています。
建設機械を提供したり、学校を建設したり、道を切り開いたり、コマツならではのダイナミックな社会貢献を積極的かつ継続的に行ってくれています!
(写真提供:JMAS)
カンボジアにおける地雷除去と復興支援の実績(累計)
項目 | 実績(2023年度まで累計) |
除去面積 | 4,355ヘクタール |
除去数 | 4,272個 |
道路建設/整備 | 100㎞ |
学校建設数 | 10校(生徒数 約800名) |
ため池 | 48個 |
農地均平化 | 80ha |
(コマツ公式HP (対人地雷処理とコミュ二ティ開発支援DATAより抜粋)
「コマツの社会貢献」を是非ご覧になってください!
カンボジアでの試験を終えて
(写真提供:JMAS)
以下は今後の課題です。
- ドローン操縦者の育成が必要
- PCや地形作成ソフトの導入とデータ管理者を配置することで、さらに現地での作業効率が向上すると考えられる
カンボジアでの広大な土地には、想像もつかない場所に多数の地雷・不発弾があります。
しかもこれらの慎重を要する作業を、炎天下の中、終わりの見えない作業をしなければなりません。
一日も早く、安心して住める日がくることを願いたいです。
カンボジアでの試験内容は、こちらの記事でご報告しています。